少年サッカー界における春生まれの優位性についての考察

少年サッカー界における春生まれの優位性についての考察

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これまで、以下の記事にて春生まれの優位性について、データの検証を行ってきました。

*データ検証1*
春生まれ(4月・5月・6月)はサッカー選手になる上で優位なのか?

この検証により、日本代表のU-15~23の世代において、春生まれ(4月・5月・6月)が優位性を持っていることが明らかになりました。そして、年次が下がるにつれて、より春生まれ(4月・5月・6月)の優位性が強くなっていたので、「年次が下がれば下がるほど春生まれ(4月・5月・6月)の優位性は強くなるのではないか」という仮説が立てられました。

*データ検証2*
サッカー・ジュニア世代における春生まれ(4月・5月・6月)の圧倒的優位性

上記の仮説を検証すべく、ジュニア世代において春生まれ(4月・5月・6月)がどのように表れているのか検証しました。対象としては、J1に所属している強豪チームのうち下部組織の生年月日を公表しているチームとしました。結果的には、日本代表U-15~23以上に、春生まれ(4月・5月・6月)が大きな優位性を持っていることが分かりました。

日本サッカー界が抱える問題

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以上の検証によって、春生まれ(4月・5月・6月)がかなり強い優位性を持っていることが分かりました。では、なぜ春生まれ(4月・5月・6月)がここまで高い優位性を持っているのでしょうか。

その理由を、FC千代田の中村圭伸監督に聞いてみました。

「端的に言うなら『優越感』でしょうね。子供は急激に成長していきますので、ジュニア世代においては4月生まれと3月生まれにはかなり大きな差が生まれます。これは、仕方のないことなのですが、ここで春生まれ(4月・5月・6月)が持つ『優越感』は、その後の人生を左右するほど大きな影響力を持ちます。『僕は他の人より優れているんだ』と思って育つ子供と、『僕は他の人より劣っているんだ』と思って育つ子供では、後の人生に甚大な影響を及ぼすということなのでしょう」

これは、かなり参考となる意見のように思います。仮に春生まれ(4月・5月・6月)の優位性が、ジュニア世代のみであれば、それは学年間の差ということで話は終わりますが、U23まで少なからず影響しているということは、中村圭伸監督の言うように、「優越感」が人を成長させている可能性は大いにあります。

試合に出場する機会による成長速度の違い

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FC千代田の中村圭伸監督は、『優越感』が与える影響の他に、『機会』の違いにも警鐘を鳴らしています。

「勝ち負けにこだわるチームですと、チーム内で実力のある選手を優先的に出場させます。そのため、結果的には春生まれ(4月・5月・6月)の選手が多く出場することになるのです。公式戦などの重要な試合であれば、尚更にその傾向は強くなります。すると、より春生まれ(4月・5月・6月)の選手に試合経験が蓄積されるので、夏秋冬生まれの選手と大きな差が生まれてしまいます。そして、ユース年代以上になると、それまでの経験値の違いが残り続けるので、なかなか差が埋まらなくなってしまうのです。」

試合経験の差による影響も、より春生まれ(4月・5月・6月)の優位性を作り出しているとのことです。確かに、重要な試合をどれだけ経験出来たかというのは、あらゆるスポーツにおいて重要な意味を持ちます。それは、サッカーにおいても例外ではないということなのでしょう。

春生まれ(4月・5月・6月)の優位性が抱える問題点

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日本のサッカー界において、春生まれ(4月・5月・6月)の優性が強い一方で、各月の出生数は、月による違いがほとんどありません。そこから分かるのは、春生まれ(4月・5月・6月)だけが特別に才能ある子供が生まれているということはないのに、春生まれ(4月・5月・6月)に絶対的な優位性が生まれてしまっていることです。

つまり、夏以降に生まれた子供にも、春生まれ(4月・5月・6月)の子供と等しく才能を持っている子供がいるのです。しかし、それらの子供は、『劣等感を覚えている』『試合に出られない』という理由で、その才能を開花させることなく、サッカーを辞めているということを意味します。

こういった現象は、4月区切りの学年制と、ジュニア世代に勝ちを求めるチームが存在し続ける限り、構造的な問題として残り続けることでしょう。

日本サッカー界がより発展していくためには、春生まれ(4月・5月・6月)以外の子供を拾い上げる仕組みや指導者のフォローが必要になってくるのではないでしょうか。

今後、春生まれ(4月・5月・6月)問題を解消するために、やるべきこと

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こういった問題に対して、どのように向き合えば良いのでしょう。

1.早生まれ(1月・2月・3月)を優遇する制度を拡大

一部の大会では、早生まれを優遇する動きが出てきました。これは、非常に有効な方法だと思います。劣等感を覚え、試合経験が少ない、というデメリットを抱えた早生まれにとって、同じ境遇の選手と試合をすることはデメリットを解消するきっかけになることでしょう。このように、生まれた月によって出場枠を区切るなどの取り組みは推奨したいです。例えば、同じチームの中でも、敢えて生まれ月によって選手をバラつかせて配置するなどの規定を盛り込むなどです。しかし、現実は、勝ちを求めるチームによる反対と、選手不足により物理的に機能しない可能性がありますが。

2.指導者のフォロー

これが、最も効果的ではないかなと思います。選手を育成するのも、選手を起用するのも、指導者の役割です。その指導者が、春生まれ(4月・5月・6月)以外を意識的に優遇することで、埋もれていた才能を開花できる可能性は高くなります。しかし、これも上記と同じように、勝ちを求めるチームにとっては、受け入れ難いことになります。


学年制を廃止することは難しいですが、構造的な問題を理解した上で対策を講じれば、春生まれ(4月・5月・6月)問題を多少なりとも緩和することは出来ると思います。子供に関わる全ての関係者が意識的に取り組むことが重要なのではないでしょうか。

また、春生まれ(4月・5月・6月)以外の子供を持つ保護者にとっては、春生まれ(4月・5月・6月)の優位性を理解した上で、それに負けないような取り組みと、精神的な教育をお願いしたいと思います。

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